【詩語表による七言絶句の作り方】

今回は、過去記事の「梅雨書懐」の詩語表を使って実際に七言絶句を作りながら、その作り方の概略を学習します(この記事はTwitter「漢詩作法入門講座」の2019年7月1日投稿のスレッドをまとめたものです。)。

過去記事:『漢詩講座(臨江詩閣 編)』より詩語表「梅雨書懐」を掲載

まずは、「韻」を選ぶわけですが、実際には、気に入った下三文字を選び、その選んだ三字の「韻」を使うことになります。
今回は「下平声十二侵韻」から「一曲琴(●●◎)」を選ぶことにしてみましょう(因みに最初に作るのは結句になります)。

次に選んだ下三文字の上に置く二文字を選びます。
平仄の原則である「二四不同」「二六同」に従って下三字が「仄仄平」だから四字目と六字目の平仄は不同になるので、第四字目は「平」になり、なおかつ、四字目の孤平は許されないので、それを避けるために「◯◯」の詩語群から選びます(このとき平仄式「●●◯◯●●◎」と四字目の孤平を避けると考えて「◯◯」の詩語を選ぶ考え方でも結構です)。

ここでは「◯◯」のグループから「蕭然」を選ぶことにします。
「蕭然一曲琴(◯◯●●◎)」、「蕭然として 一曲の琴」

これまでと同様に「二四不同」「二六同」だから第二字目が「仄」となる「●●」あるいは「◯●」の詩語群から上の二字を選びます。

ここでは「●●」のグループから「黙坐」を選ぶことにします。
「黙坐蕭然一曲琴(●●◯◯●●◎)」、「黙坐 蕭然として 一曲の琴」

「黙坐蕭然一曲琴(●●◯◯●●◎)」、この句を結句とすると、転句の下三字の平仄は結句の反対だから「◯◯●」となります(転句は韻を踏まないので、七文字目は「仄」、六文字目は結句の平仄と反対になるから「平」、つまり転句の下三文字の平仄は「◯◯●」あるいは「●◯●」となります)。

ここでは転句の「◯◯●」のグループから「無人訪」を選ぶことにしました。
「無人訪(人の訪う無し)」
「黙坐蕭然一曲琴(黙坐 蕭然として 一曲の琴)」

次に転句の下三字の上二字も結句の平仄と反対の「●●」となるので「●●」「◯●」のグループから選ぶことになります。

では、転句の三・四字目には「●●」のグループから「竹逕」を選ぶことにします。
「竹逕無人訪、黙坐蕭然一曲琴」

転句の一・二字目はこれまでと同様の考え方で「◯◯」「●◯」のグループになるので、ここでは「◯◯」のグループから「濛濛」を選んでみます。
「濛濛竹逕無人訪(◯◯●●◯◯●)」
「黙坐蕭然一曲琴(●●◯◯●●◎)」

次に起句と承句の下三文字を選びます。

まず、起句の平仄は結句の平仄と同じになるので、その平仄は「●●◎」となります。

また、承句は押韻句で、その平仄は転句の二・四・六字目の平仄と同じですから、「△◯◎」となります。このとき下三連禁止で、六文字目と七文字目の平仄は動かないので、五文字目が「仄」となり、その結果「●◯◎」となります。

さて、結句において韻字を「下平声十二侵韻」としましたから、起句と承句も同じグループから選ぶことになります。起句には「烟雨深(◯●◎)」、承句には「湿衣襟(●◯◎)」を選ぶことにします。

ここまでの段階で、各句は次のようになっています。

 ▲▲△△烟雨深、●●◯◯◯●◎
 △△▲▲湿衣襟。◯◯●●●◯◎
 濛濛竹逕無人訪、◯◯●●◯◯●
 黙坐蕭然一曲琴。●●◯◯●●◎

起句の三・四字目は五字目が「烟(平)」なので、孤平のことは気にせず「◯◯」か「◯●」のグループから選ぶことになります。今回は「昼昏(●◯)」を選ぶことにしましょう。
「●●昼昏烟雨深」

起句の二文字目の平仄は結句と同じになりますから、一文字目と二文字目の詩語は「●●」か「◯●」のグループから選ぶことになります。。今回は「連日(◯●)」を選ぶことにします。

ここまでで起句が一応できたことになります。

 連日昼昏烟雨深、◯●●◯◯●◎
 △△▲▲湿衣襟。◯◯●●●◯◎
 濛濛竹逕無人訪、◯◯●●◯◯●
 黙坐蕭然一曲琴。●●◯◯●●◎

最後に承句に取り掛かります。まず、四文字目の平仄は転句と同一ですから三・四文字目の詩語は「●●」か「◯●」のグループ、一・二文字目は「◯◯」か「●◯」のグループから選ぶことになります。

今回は三・四文字目に「苔気(◯●)」、一・二字目に「草廬(●◯)」を選んでみました。

こうして一応できあがった詩は次のようになります。最後に題をつけます。ここでは詩語表の表題でもある「梅雨書懐」としておきます。

  梅雨書懐
 連日昼昏烟雨深、◯●●◯◯●◎
 草廬苔気湿衣襟。●◯◯●●◯◎
 濛濛竹逕無人訪、◯◯●●◯◯●
 黙坐蕭然一曲琴。●●◯◯●●◎

  梅雨書懐
 連日 昼昏く 烟雨深し、
 草廬の苔気 衣襟を湿す。
 濛濛たる 竹逕 人の訪う無し、
 黙坐 蕭然として 一曲の琴。

これまで説明してきた作り方は、あくまでも詩語表から平仄を中心とした作り方です。本来は、ある程度の構想を立ててから、あるいは結句を考えた時点で全体の構想を錬る必要があります。

しかし、最初から「構想」を立ててというのは、ある程度「作る」ことに慣れないと難しい気がします。そのためにもまずは、「一詩」を作ってみてください。

そして「一詩」ができたら「推敲」です。
例えば、「一曲琴」を「唯有琴」として、結句を考え直すとか、「梅雨書懐」以外の詩語表からもっと良い語はないか検討するとか、やることはいろいろあります。

一詩の句作りの順序としては、今回の例もそうですが、最初は「結句」を作り、それから「転句」を作る。次に「起承」の下三字を選んでから、「起句」から「承句」と作り、最後に全体を見直す、のが作り方の基本順序となります。

また、一句を作るのも、「下から上へ」と作るのが、最初のうちは無難だと思います。上から作ることも悪くはないのですが、どうも土台(下三字)が不安定になりやすいように思います。

「連日昼昏烟雨深、草廬苔気湿衣襟。濛濛竹逕無人訪、黙坐蕭然一曲琴。」
これは「構想無し」「推敲無し」の、只々平仄という形だけの文字の羅列で「穴だらけの状態」です。まずは、練習用にこのような羅列を作ってみては如何。

平仄以外の要点をまとめると以下の通りです。
 1.一句は下から作る
 2.結句→転句→起承句の順番で作る
 3.詩語表は何種類使っても良い
 4.まずは、「一詩」を作ってみる
 5.「推敲」する(これもなかなか難しいことですが)

以上、作り方の概略でした。


では、次の記事で、また、お会いしましょう。
失礼します。

投稿者: 滄洲

趣味で漢詩を作ったり、三体詩や聯珠詩格などの詩集、論語や老子などの漢文を読んだりしている「滄洲」と言います。 よろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA