漢和辞典で詩韻を調べるー実例(2)

前回は​『唐詩選に収録されている「張九齡」の五言絶句「照鏡見白髮」の詩韻を漢和辞典で調べた。今回は、その詩韻を「四声」 と「平仄」の面から調べてみる。

原文

  照鏡見白髮
宿 昔 青 雲 志
蹉 跎 白 髮 年
誰 知 明 鏡 裏
形 影 自 相 憐
読み方

  鏡に照らして白髮を見る

宿昔 青雲の志、

蹉跎たり 白髮の年。

誰か知らん 明鏡の裏、

形影 自ら相憐れまんとは。

五言絶句「照鏡見白髮」の四声を調べる

前回、五言絶句「照鏡見白髮」の詩韻を漢和辞典を使って調べた。

宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓。
屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先。
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻。

誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓。
支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先。
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻。

次に、それぞれの韻が「四声」、すなわち「平声」、「上声」、「去声」、「入声」のいずれに分類されるかを調べる。

その結果は次の通りだ。

宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
入 入 平 平 去、平 平 入 入 平
声 声 声 声 声、声 声 声 声 声

誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
平 平 平 去 上、平 上 去 平 平
声 声 声 声 声、声 声 声 声 声

さて、次に「平仄」については、四声の内、「平声」以外はすべて「仄声」になるから、結果は次のようになる。

宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
入 入 平 平 去、平 平 入 入 平
声 声 声 声 声、声 声 声 声 声
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
仄 仄 平 平 仄、平 平 仄 仄 平
誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先
韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
平 平 平 去 上、平 上 去 平 平
声 声 声 声 声、声 声 声 声 声 
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
平 平 平 仄 仄、平 仄 仄 平 平

ここまで調べた結果を平仄のみに注目すれば次のようになる。

宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
仄 仄 平 平 仄、平 平 仄 仄 平
誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
平 平 平 仄 仄、平 仄 仄 平 平

さらに、昔から仄声を黒丸「●」、平声を白丸「○」で表記することも多い。また四声を表記するための記号を「圏点」と呼ぶが、この平仄を表す記号も「圏点」の一種である。

宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
● ● ○ ○ ●、○ ○ ● ● ○
誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓
○ ○ ○ ● ●、○ ● ● ○ ○

今後は、特に断りない場合には、白丸、黒丸は平仄を意味するものとして用いることにする。


今回のキーワード

​詩韻,唐詩選,張九齡,照鏡見白髮,四声,平声,上声,去声,入声,平仄,仄声,圏点


今回の独習で使用したテキスト

戸川 芳郎 (監修), 佐藤 進 (編集), 濱口 富士雄 (編集)(2006年)『全訳 漢辞海 第二版』三省堂

投稿者: 滄洲

趣味で漢詩を作ったり、三体詩や聯珠詩格などの詩集、論語や老子などの漢文を読んだりしている「滄洲」と言います。 よろしくお願いします。