「漢文とは何か」(其の七)〜漢字の「音訓」の正体(4)

これまで「音読み」、「訓読み」の初歩的な事柄について学習しました。「音読み」では、中国語の発音が訛ったものであること、また、中国語としての発声法(声調)である四声を表現できないことなどがわかりました。

一方、「訓読み」は「やまとことば」であり、中国語の意味を表す「読み」もあれば、全く意味の違う「国訓」や和製漢字である「国字」などがあることがわかりました。

今回は、「訓読み」について、もう少し学習してみました。なお、『漢字の「音訓」の正体』という仰々しい題の学習は今回が最終回です。

「訓読み」と「送りがな」の関係について学習してみた

最初に例として挙げた「山」の文字について再掲します。

「山」・・・「さん」(音読み)
「山」・・・「やま」(訓読み)

この「山」の文字の訓読みは「やま」であり、意味も「音読み」の場合と同じになります。「川」、「春」、「牛」などの文字も同様です。

では、つぎに前回の「音読み」で挙げた「明」の文字の「訓読み」について調べてみます。

「明」・・・あかり、あかるい、あきらか、あける(訓読み)

ここに挙げた読み方以外の訓読みが掲載されている辞典もあると思いますが、今は、この四種類で学習していきます。

「明」の文字について「訓読み」として四種類の読み方を挙げましたが、これらは次のように表記することもできます。

かり、明るい、明らか、明ける

このときの「かり」、「るい」、「らか」、「ける」を「送りがな」と呼びます。この「送りがな」については、特に問題となることはないし、「新しい」、「新らしい」などのように、多少の差はあっても学校で教えられている「送りがなの付け方」による範疇のものです。

では、『「漢文とは何か」(其の二)〜漢文は中国語なのか?』で掲載した李白の「静夜思」の最初の句をもう一度見てみます。

牀 前 看 月 光 ・・・ 牀前 月光

この句では語順を変え、さらに「を」と「る」という「かな」を加えて日本語として、「漢文」を読んでいます。このときの「る」が「送りがな」であることはわかりやすいと思います。

一方、「を」については、現在の「送りがなの付け方」では「送りがな」とは呼びません。しかし漢文の訓読では「を」も「送りがな」になります。つまり、漢文の訓読における「送りがな」は、私たちが日常で考えている「送りがな」よりも範疇が広いものです。

要するに原文の漢字ばかりの「漢文」に加えられた「仮名」は、すべて「送りがな」になります。そのため一般的な「送りがな」とは、範囲が異なるため「添えがな」とも呼ばれます。

今後、「送りがな」という場合は、もちろん漢文訓読における「送りがな」を意味するものとして使用します。

今回は、「訓読み」の学びというよりは、「訓読み」をする上で欠かすことのできない「送りがな」について、その基礎の基礎を学びました。ただし、実際には「送りがな」という言葉の使い方を学んだぐらいで、「送りがな」そのものの学びには至っていません。

この「送りがな」についてもっと学習を深めたい方は前野先生の「漢文入門」の第三章にある「送りがな」という節に詳しく述べられているので、ぜひ読んでいただければと思います。


今回のキーワード

音読み、訓読み、四声、やまとことば、国訓、国字、李白、静夜思、送りがな(送り仮名)、訓読、添えがな(添え仮名)


今回の勉強で使用したテキスト

前野直彬(2015年)『漢文入門』筑摩書房
加藤徹(2013年)『白文攻略 漢文法ひとり学び』白水社
古田島洋介・湯城吉信(2011年)『漢文訓読入門』明治書院
小川 環樹・西田 太一郎(1957年)『漢文入門』岩波書店


投稿者: 滄洲

趣味で漢詩を作ったり、三体詩や聯珠詩格などの詩集、論語や老子などの漢文を読んだりしている「滄洲」と言います。 よろしくお願いします。