漢詩作法入門講座

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句法 - 作詩講義

二、対句法(其一)

対句の句法

古人が対句の句法を論じたるもの一様でない。「天地」、「日月」と対するのは正名対、「花葉」と「草芽」とは同類対、「蕭蕭」と「赫赫」とは連珠対、「黄桃」と「緑柳」とは双声対、「彷徨」と「放曠」とは畳韻対、「春樹」と「秋池」とは双擬対などがある。『詩苑類格』に掲載する所の八対【1】というのは、次の如くである。

的名対酒東南去、迎琴西北来の如し、
異類対風織池間樹、虫穿草上文の如し、
双声対秋露香佳菊、春風馥麗蘭の如し、
畳韻対放蕩千般意、遷延一人心の如し、
連綿対浅河若帯、初月如眉の如し、
双擬対月眉欺月、論花頰勝花の如し、
回文対情新因意得、意得為情新の如し、
隔句対相思復相思、夜夜涙沾衣、空嘆復空嘆、朝朝君未帰の如し、

【1】『詩苑類格』より
詩有八對。一曰的名對,"送酒東南去,迎琴西北來"是也。二曰異類對,"風織池間樹,蟲穿草上文"是也。三曰雙聲對,"秋露香佳菊,春風馥麗蘭"是也。四曰疊韻對,"放蕩千般意,遷延一介心"是也。五曰聯綿對,"殘河若帶,初月如眉"是也。六曰雙擬對,"議月眉欺月,論花頰勝花"是也。七曰回文對,"情新因意得,意得逐情新"是也。八曰隔句對,"相思復相憶,夜夜淚沾衣,空嘆復空泣,朝朝君未歸"是也。

次に又『詩法纂論』に述ぶる所の、五言、七言今体の対句法は左の如くである。

五言近体の句法【2】として挙げたるもの。

流水対江流天地外、山色有無中
分装対屡将心上事、相対夢中論
反装対好武寧論命、封侯不
走馬対野老来看客、河魚不
折腰対寢聽金鑰、因風想玉珂
層折対遠水兼天湧、孤城隱霧深
背面対薬能無婦、應門自有

【2】詩法纂論 五言近体纂論より
句法には流水対なる者有り。唐句の「將余去國涙,灑子入郷衣」【3】の如き是なり。句中対なる者有り。「江流天地外、山色有無中」【4】の如き是なり。分装対なる者有り。「屢將心上事、相與夢中論」【5】の如き是なり。倒装対なる者有り。杜句の「亂雲低薄暮,急雪舞迴風」【6】の如き是なり。反装対なる者有り。「好武寧論命、封侯不計年」【7】の如き是なり。走馬対なる者有り。「野老來看客,河魚不用錢」【8】の如き是なり。折腰対なる者有り。「不寢聽金鑰、因風想玉珂」【9】の如き是なり。層折対なる者有り。「遠水兼天淨,孤城隱霧深」【10】の如き是なり。背面対なる者有り。「暴薬能無婦、應門自有兒」【11】の如き是なり。借対有り、又これを仮対と謂う。「廚人具雞黍,稚子摘楊梅」【12】の如き、楊を借りて羊と為し、上句の雞字に対するは是なり。

【3】嶺南送使 (張説)
秋 雁 逢 春 返
流 人 何 日 歸
將 余 去 國 涙
灑 子 入 郷 衣
飢 狖 啼 相 聚
愁 猿 喘 更 飛
南 中 不 可 問
書 此 示 京 畿
秋雁 春に逢って返り、
流人 何れの日にか帰らん。
余が去国の涙を将って、
子が入郷の衣に灑ぐ。
飢狖 啼いて相聚い、
愁猿 喘いで更に飛ぶ。
南中 問うべからず、
此に書して 京畿に示さん。
【4】漢江臨汎 (王維)
楚 塞 三 湘 接
荊 門 九 派 通
江 流 天 地 外
山 色 有 無 中
郡 邑 浮 前 浦
波 瀾 動 遠 空
襄 陽 好 風 日
留 醉 與 山 翁
楚塞 三湘に接し、
荊門 九派に通ず。
江流 天地の外、
山色 有無の中。
郡邑 前浦に浮かび、
波瀾 遠空を動かす。
襄陽 風日好し、
留まりて山翁と酔わん。

【5】未詳

【6】對雪 (杜甫)
戰 哭 多 新 鬼
愁 吟 獨 老 翁
亂 雲 低 薄 暮
急 雪 舞 迴 風
瓢 棄 尊 無 緑
爐 存 火 似 紅
數 州 消 息 斷
愁 坐 正 書 空
戦哭 新鬼多く、
愁吟 独り老翁。
乱雲 薄暮に低れ、
急雪 廻風に舞う。
瓢棄てられて 樽に緑 無く、
炉存して 火は紅に似たり。
数州 消息断たれ、
愁え坐して 正に空に書す。
【7】送人從軍 (杜甫)
弱 水 應 無 地
陽 關 已 近 天
今 君 渡 沙 磧
累 月 斷 人 煙
好 武 寧 論 命
封 侯 不 計 年
馬 寒 防 失 道
雪 沒 錦 鞍 韉
弱水 応に地に無く、
陽関 已に天に近し。
今 君 沙磧を度り、
累月 人煙断ゆ。
好武 寧ろ命を論じ、
封侯 年を計えず。
馬寒くして 防ぎて道を失い、
雪没 錦の鞍韉なり。
【8】陪鄭廣文遊何將軍山林十首 其六 (杜甫)
風 磴 吹 陰 雪
雲 門 吼 瀑 泉
酒 醒 思 臥 簟
衣 冷 欲 裝 綿
野 老 來 看 客
河 魚 不 取 錢
只 疑 淳 樸 處
自 有 一 山 川
風磴に 陰雪の吹くは、
雲門に 瀑泉の吼ゆるなり。
酒醒めて 簟に臥さんことを思い、
衣冷やかにして 綿を装わんと欲す。
野老 来たりて客を看、
河魚 銭を取らず。
只に疑う 淳樸の処、
自ずから一山川有るかと
【9】春宿左省 (杜甫)
花 隱 掖 垣 暮
啾 啾 棲 鳥 過
星 臨 萬 戸 動
月 傍 九 霄 多
不 寢 聽 金 鑰
因 風 想 玉 珂
明 朝 有 封 事
數 問 夜 如 何
花は隠として 掖垣暮れ、
啾啾として 棲鳥過ぐ。
星は万戸に臨んで動き、
月は九霄に傍って多し。
寝ずして 金鑰を聴き、
風に因って 玉珂を想う。
明朝 封事有り、
数しば問う 夜は如何と
【10】野望 (杜甫)
清 秋 望 不 極
迢 遞 起 曾 陰
遠 水 兼 天 淨
孤 城 隱 霧 深
葉 稀 風 更 落
山 迥 日 初 沈
獨 鶴 歸 何 晚
昏 鴉 已 滿 林
清秋 望み極まらず、
迢逓として 層陰起こる。
遠水 天を兼ねて浄く、
孤城 霧に隠れて深し。
葉稀なるに 風更に落とし、
山迥かにして 日初めて沈む。
独鶴 帰ること何ぞ晩き、
昏鴉 已に林に満つ。
【11】秦州雜詩二十首 其二十 (杜甫)
唐 堯 真 自 聖
野 老 復 何 知
曬 藥 能 無 婦
應 門 幸 有 兒
藏 書 聞 禹 穴
讀 記 憶 仇 池
爲 報 鴛 行 舊
鷦 鷯 在 一 枝
唐堯 真に自ら聖なり、
野老 復た何をか知らん。
薬を曬す 能に婦無からんや、
門に応ずるは 幸い児有り。
書を蔵する 禹穴ありと聞き、
記を読みて 仇池を憶う。
為に報ず 鴛行の旧に、
鷦鷯は一枝に在りと。
【12】裴司士員司戸見尋 (孟浩然)
府 僚 能 枉 駕
家 醞 復 新 開
落 日 池 上 酌
清 風 松 下 來
廚 人 具 雞 黍
稚 子 摘 楊 梅
誰 道 山 公 醉
猶 能 騎 馬 回
府僚 能く枉駕し、
家醞 復新たに開く。
落日 池上に酌み、
清風 松下より來る。
廚人 雞黍を具え、
稚子 楊梅を摘む。
誰か道う 山公酔い、
猶能く 馬に騎り回ると。

七言今体の句法【13】として挙げたるもの。

折腰対貪夜識金銀気、 遠害朝看麋鹿遊
三折対風急天高猿嘯哀、水清沙白鳥飛還
倒装対紅稻啄餘鸚鵡粒、碧梧棲老鳳凰枝
分装対旌旗日暖龍蛇動、宮殿風微燕雀高
流水対己知白髪非春事、且尽芳樽物華
走馬対昼漏稀聞高閣報、天顔有喜近臣知
錯綜対楊花細逐桃花落、 黃鳥時兼白鳥
句中対孤雲獨鳥川光動,萬井千山海色秋
就句対白首丹心依紫禁、一麾伍部浄三辺

【13】詩法纂論 七言近体纂論より
折腰対なる者あり。「不貪夜識金銀氣,遠害朝看麋鹿遊」【14】の如き是なり。三折対なる者有り。「風急天高猨嘯哀,渚清沙白鳥飛迴」【15】の如き是なり。倒装対なる者有り。「紅稻啄餘鸚鵡粒,碧梧棲老鳳皇枝」【16】の如き是なり。分装対なる者有り。「旌旗日暖龍蛇動,宮殿風微燕雀高」【17】の如き是なり。流水対なる者有り。「已知白髮非春事,且盡芳尊戀物華」【18】の如き是なり。走馬対なる者有り。「晝漏稀聞高閣報,天顏有喜近臣知」【19】の如き是なり。錯綜対なる者有り。「桃花細逐楊花落,黃鳥時兼白鳥飛」【20】の如き是なり。句中対なる者有り。唐句、「孤雲獨鳥川光動,萬井千山海色秋」【21】の如き是なり。就句対なる者有り。「白首丹心依紫禁、一麾伍部浄三辺」【22】の如き是なり。

【14】題張氏隱居二首 其一 (·杜甫)
春 山 無 伴 獨 相 求
伐 木 丁 丁 山 更 幽
澗 道 餘 寒 歷 冰 雪
石 門 斜 日 到 林 丘
不 貪 夜 識 金 銀 氣
遠 害 朝 看 麋 鹿 遊
乘 興 杳 然 迷 出 處
對 君 疑 是 泛 虛 舟
春山 伴無く 独り相求め、
伐木 丁丁として 山更に幽なり。
澗道の余寒 冰雪を歴、
石門の斜日 林丘に到る。
貪らずして 夜、金銀の気を識り、
害より遠ざかり 朝に廉鹿の遊ぶを看る。
興に乗じ 杏然として 出処に迷い、
君に対し 疑うらくは是れ 虚舟を泛かぶるかと
【15】登高 (杜甫)
風 急 天 高 猨 嘯 哀
渚 清 沙 白 鳥 飛 迴
無 邊 落 木 蕭 蕭 下
不 盡 長 江 袞 袞 來
萬 里 悲 秋 常 作 客
百 年 多 病 獨 登 臺
艱 難 苦 恨 繁 霜 鬢
潦 倒 新 停 濁 酒 桮
風急に 天高くして 猿嘯哀し、
渚清く 沙白くして 鳥飛び廻る。
無辺の落木 蕭蕭として下り、
不尽の長江 袞袞として来たる。
万里 悲秋 常に客と作り、
百年 多病 独り台に登る。
艱難 苦だ恨む 繁霜の鬢、
潦倒 新たに停む 濁酒の杯。
【16】秋興八首 其八 (杜甫)
昆 吾 御 宿 自 逶 迤
紫 閣 峰 陰 入 渼 陂
香 稻 啄 餘 鸚 鵡 粒
碧 梧 棲 老 鳳 皇 枝
佳 人 拾 翠 春 相 問
仙 侶 同 舟 晚 更 移
綵 筆 昔 遊 干 氣 象
白 頭 吟 望 苦 低 垂
昆吾 禦宿 自ずから逶迤たり、
紫閣峰陰 渼陂に入る。
香稻 啄み余す 鸚鵡の粒、
碧梧 棲み老ゆ 鳳凰の枝。
佳人 翠を拾いて 春相問い、
仙侶 舟を同じくして 晩に更に移る。
彩筆 昔曽て 気象を干し、
白頭 吟望して 低垂に苦しむ。
【17】奉和賈至舍人早朝大明宮 (杜甫)
五 夜 漏 聲 催 曉 箭
九 重 春 色 醉 仙 桃
旌 旗 日 暖 龍 蛇 動
宮 殿 風 微 燕 雀 高
朝 罷 香 煙 攜 滿 袖
詩 成 珠 玉 在 揮 毫
欲 知 世 掌 絲 綸 美
池 上 於 今 有 鳳 毛
五夜の漏声 暁箭を催し、
九重の春色 仙桃に酔う。
旌旗 日暖かにして 竜蛇動き、
宮殿 風徴にして 燕雀高し。
朝罷みて 香煙 携えて袖に満ち、
詩成りて 珠玉 揮毫に在り。
世、絲綸掌るの美を知らんと欲せば、
池上 今に於いて 鳳毛有り。
【18】曲江陪鄭八丈南史飲 (杜甫)
雀 啄 江 頭 黃 柳 花
鵁 鶄 鸂 鶒 滿 晴 沙
自 知 白 髮 非 春 事
且 盡 芳 尊 戀 物 華
近 侍 即 今 難 浪 迹
此 身 那 得 更 無 家
丈 人 文 力 猶 強 健
豈 傍 青 門 學 種 瓜
雀啄の江頭 柳花黃ばみ、
鵁鶄 鸂鶒 晴沙に滿つ。
自ら知る 白発 春事に非ざるを、
且 芳尊を尽くして 物華を恋う。
近侍 即今 浪跡難し、
此の身 那ぞ更に家無きを得んや。
丈人 文力 猶強健、
豈は 青門に傍り 瓜を種るを學ばん。
【19】紫宸殿退朝口號 (杜甫)
戸 外 昭 容 紫 袖 垂
雙 瞻 御 座 引 朝 儀
香 飄 合 殿 春 風 轉
花 覆 千 官 淑 景 移
晝 漏 希 聞 高 閣 報
天 顏 有 喜 近 臣 知
宮 中 每 出 歸 東 省
會 送 夔 龍 集 鳳 池
戸外の昭容 紫袖垂れ、
御座を双降して 朝儀を引く。
香、合殿に飄り 春風転じ、
花、千官を覆いて 淑景移る。
昼漏 聞こゆること希に 高閣報じ、
天顔 喜び有って 近臣知る。
宮中より毎に出でて 東省に帰り、
会送す 夔竜の 鳳池に集まるを。
【20】曲江對酒 (杜甫)
苑 外 江 頭 坐 不 歸
水 精 春 殿 轉 霏 微
桃 花 細 逐 楊 花 落
黄 鳥 時 兼 白 鳥 飛
縱 飲 久 判 人 共 棄
嬾 朝 真 與 世 相 違
吏 情 更 覺 滄 洲 遠
老 大 悲 傷 未 拂 衣
苑外の江頭 坐して帰らず、
水精の春殿 転た霏微ひびたり。
桃花 細かに梨花を逐うて落ち、
黄鳥 時に白鳥と飛ぶ。
飲を縦にし 久しく判して 人共に棄て、
朝するに懶く 真に世と相違う。
吏情 更に覚ゆ 滄洲の遠き、
老大 悲傷 未だ衣を払わず。
【21】同皇甫冉登重玄閣 (李嘉祐)
高 閣 朱 欄 不 厭 遊
蒹 葭 白 水 遶 長 洲
孤 雲 獨 鳥 川 光 暮
萬 井 千 山 海 色 秋
清 梵 林 中 人 轉 靜
夕 陽 城 上 角 偏 愁
誰 憐 遠 作 秦 呉 別
離 恨 歸 心 雙 淚 流
高閣 朱欄 遊を厭わず、
蒹葭 白水 長洲を遶る。
孤雲 独鳥 川光暮れ、
万井 千山 海色秋なり。
清梵 林中 人転た静かに、
夕陽 城上 角偏に愁う。
誰か憐れまん 遠く秦呉の別を作し、
離恨 帰心 双涙流るるを。

【22】未詳

なお、他に対句の句法を論じたるもの多くあれども、ここには略して載せない。更に煉句の法について述べてみようと思う。

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