漢詩作法入門講座

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詩有輕重清濁大小緩急 - 詩學逢原

詩有輕重清濁大小緩急(詩に輕重清濁大小緩急有り)

右の如く雅字を撰び用ゆといえども、又其の篇一句一字に輕重、清濁、大小、緩急の節奏あることを知るべし。右の八つは、皆つり合いを云うなり。一句のつり合いあり、一篇のつり合いあり。一句のつり合いとは、五言なれば、たとえば、上二字と下二三字、七言なれば、上下の中、或は上二字と下二三字、或は上四字と下二三字、何れにも上下つり合って、清ならば清、濁ならば濁、輕くは同じく輕く、重くは同じく重く、大小緩急も同じくつり合うを云う。又對句の時も鄰の句と右のつり合いを違(たが)わぬように、心得て作るべし。

譬えば、「池塘生春草」と云うを、「江塘生春草」とすれば、重くして、下の春草とつり合わず、又「池頭生百草」とすれば、百草の字濁りて、上の池塘の清きと合わず。「五更斜雨送青春」と云うを、五更を滿城としては重くして、斜雨青春とつり合わず、其の時は滿城風雨とすればつり合うなり。此の如き所勝(あげ)て數うべからず。對句にも、明月は輕く清めり、暴風は重く濁る、對すべからず。明月には白雲とか、清風とか、同じく輕き字を用ゆべし。又鳳皇城(ほうおうじょう)は重し、鷗鷺渚(おうろのしょ)は輕し。鳳皇城には、烏鵲橋(うじゃくきょう)、鳷鵲觀(しじゃくかん)の類いを對す。鷗鷺渚には、鴛鴦磯(えんおうのき)の類いを對すべし。是れ其の意を言うに非ず。文字の響きを云うなり。

又一篇に云えば、杜詩の「白帝城中雲出門」と云う一首は、暴雨を作る故、其の詩も亦勢甚だ急にて滯りなし。曲江の數首は、春景の長閑なるを賦する故、其の詩の勢甚だ緩し。岳陽樓の詩は重く大なり。何氏山林の詩は、輕く小なり。其の題により其の事に就きて、緩急大小、體皆殊なる時は、其の殊なるに隨って、全篇そろいて其の體に應ずるように作るべし。一句にても違えば、雜(まじ)りて一篇をなさず。後世の詩人、此義を知らず。義理きこゆれば、詩なりと心得る。甚だ僻事(ひがこと)なり。別して日本人、夢にも此の如きことを知らず。故に作り出す詩、輕重、清濁、大小、緩急、つり合い亂れて、讀むに堪えず。見るに笑を發す。其の輕重、清濁、大小、緩急を知ること別に口傳あり。今斯(ここ)に其の口傳を示さんと欲すといえども、其の機に投ぜざる人には、引て發すべからず。

昔年、予人に語って云う。「杜苟鶴が『風瞹鳥聲碎、日高花影重』と云う句は、題を問わずして、閨情の詩たることを知るべし」と云いければ、彼人聞きて、「いや曾て閨情と云うことは見えず、春景の句、何れの地にも合えし」とて、とかく合點ゆかず。かかる愚昧の人もあれば、海を語り冰を語るは、其の人によるべし。

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