漢詩作法入門講座

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五言古詩(2) - 卷之一 - 唐詩選 - 漢詩の鑑賞

唐詩選とは

『唐詩選』は、李攀竜(1514〜1570。明代の詩人。字は于鱗、号は滄溟。)が編纂したと言われている唐代の漢詩集である。五言古詩十四首、七言古詩三十二首、五言律詩六十七首、五言排律四十首、七言律詩七十三首、五言絶句七十四首、七言絶句百六十五首、七巻から構成され、日本で最もよく読まれている漢詩集のひとつである。そのため参考書も数多く出版されている。

本サイトでは、主に漢詩の原文、読み、平仄などを中心に紹介するものとし、語釈などは既存のテキストに譲り、本サイトでは蛇足を付けました(見当違い、誤解など蛇が蛇でなくなる可能性がありますが、拙の勉強不足ですのでご容赦下さい)

送別

原詩

「送別(王維)下馬飮君酒。問君何所之。君言不得意。歸臥南山陲。但去莫復問。白雲無盡時。」

【作者】

王維(おうい)=(699〜759)。盛唐の詩人。字は摩詰。王右丞とも呼ばれる。李白が詩仙、杜甫が詩聖と呼ばれるのに対し、詩仏と呼ばれ、画についても、『南画の祖』と仰がれている。

【平仄】

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【読み方】

送別(そうべつ)

(うま)より下(お)りて 君(きみ)に酒(さけ)を飲(の)ましめ、君(きみ)に問(と)う 何(いず)れの所(ところ)にか之(ゆ)くと。

(きみ)は言(い)う 意(い)を得(え)ずして、南山(なんざん)の陲(ほとり)に帰臥(きが)すと。

(ただ)(さ)れ 復(また)(と)うこと莫(な)く、白雲(はくうん)(つ)きる時(とき)(な)し。

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【蛇 足】

  • この詩は、五言古詩一韻到底格。

  • 韻字(上平声支韻)、 之、陲、時。

  • 『唐詩選詳説(簡野道明)』に「梁の陶弘景の詩から脱胎し来たって別に一機軸を出したもので、神韻縹渺、含蓄不尽の妙があるから、後世、五言短古を学ぶ者の、宜しく典型(てほん)と為すべき名篇である」とあり。

  • 陶弘景の詩は、つぎの通りである。

    「詔問山中何所有賦詩以答」
    山中何有所、嶺上多白雲。
    只可自怡悦、不堪持寄君。

    「山中に何の有る所ぞと詔問せられ、詩を賦して以って答う」
    山中 何の有る所ぞ、嶺上 白雲多し。
    只だ 自ら怡み悦ぶべし、持して 君に寄するに堪えず。

  • 換骨奪胎」あるいは「換骨脱胎」とは、古人の詩の作意や形式をもとに、独自の趣向を加えて新しい作品を作ることである。出典は、 『冷斎夜話』という詩話集で、「然れども、その意を易えずしてその語を造る、これを換骨法と謂い、その意を規範としてこれを形容す、これを奪胎法と謂う」とある。

  • 『唐詩選評釈(森槐南)』に、「その通篇一律句を交えずして出句(韻を押さざるもの)第三字必ず仄、落句(韻を押したるもの)第三字必ず平、初学此れ等を取りて準則と為せば、音節の諧叶を得るに於いて庶幾わくばその正鵠を誤るの虞なからん而已」とあり。

西山

原詩

「西山(常建)一身爲輕舟、落日西山際。常隨去帆影、遠接長天勢。』物象歸餘清、林巒分夕麗。亭亭碧流暗、日入孤霞繼。』洲渚遠陰映、湖雲尚明霽。林昏楚色來、岸遠荊門閉。』至夜轉清迥、蕭蕭北風厲。沙邊雁鷺泊、宿處蒹葭蔽。』圓月逗前浦、孤琴又搖曳。冷然夜遂深、白露沾人袂。」

【作者】

常建(じょうけん)=(生没年不詳)。盛唐の詩人。

【平仄】

西
宿

【読み方】

西山(せいざん)

一身(いっしん) 軽舟(けいしゅう)と為(な)り、落日(らくじつ) 西山(せいざん)の際(きわ)。 常(つね)に去帆(きょはん)の影(かげ)に随(したが)い、遠(とお)く長天(ちょうてん)の勢(いきお)いに接(せっ)す。」

物象(ぶっしょう)は 余清(よせい)に帰(き)し、林巒(りんらん)は 夕麗(せきれい)を分(わか)つ。 亭亭(ていてい)として 碧流(へきりゅう)(くら)く、日(ひ)は入(い)りて 孤霞(こか)は継(つ)ぐ。」

洲渚(しゅうしょ)は 遠(とお)く陰映(いんえい)し、湖雲(こうん)は 尚(なお)明霽(めいせい)なり。 林(はやし)は昏(くら)く 楚色(そしょく)(きた)り、岸(きし)は遠(とお)く 荊門(けいもん)(と)ざす。」

(よ)に至(いた)りて 転(うたた)清迥(せいけい)、蕭蕭(しょうしょう)として 北風(ほくふう)(はげ)し。 沙辺(さへん)に 雁鷺(がんろ)(はく)し、宿処(しゅくしょ)は 蒹葭(けんか)(おお)う。」

円月(えんげつ) 前浦(ぜんほ)に逗(とど)まり、孤琴(こきん) 又(また)揺曳(ようえい)す。 冷然(れいぜん)として 夜(よる)(つい)に深(ふか)く、白露(はくろ) 人(ひと)の袂(たもと)を沾(うるお)す。」

【蛇 足】

  • この詩は、五言古詩一韻到底格。

  • 韻字(去声霽韻)は、際、勢、麗、繼、霽、閉、厲、蔽、曳、袂。

  • 「洲渚」を「渚日」とするものあり。

  • この詩は四句を一解として、全五解から構成される。

  • 『唐詩選詳説(簡野道明)』に「一身為軽舟の一句を以て総起し、以下層層敍し来たって、条理井然、徹頭徹尾尽く是れ一身軽舟の趣を離れないのは、最も措辞の巧妙を見る。」とあり。

  • 『唐詩選評釈(森槐南)』に、「首に落日を点明し、既にして日入り、既にして夜、既にして月出で、既にして夜深し。層次接落井井として条あり、而してその写景一複詞を見ず。此等即ち真に有声の画たるに愧じざるものなり。」とあり。

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