漢詩作法入門講座

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三体詩-七言絶句-虛接(4) - 漢詩の鑑賞

虛接

【原文】

周弼曰。謂第三句以虛語接前二句也。亦有語雖實而意虛者。於承接之間。略加轉換。反與正相依。順與逆相應。一呼一喚。宮商自諧。如用千鈞之力。而不見形迹。繹而尋之有餘味矣。

【読み方】

虚接(きょせつ)

周弼(しゅうひつ)(いわ)く、第三句(だいさんく)虚語(きょご)を以(もっ)て前二句(ぜんにく)に接(せっ)するを謂(い)うなり。亦(また)、語(ご)は実(じつ)なりと雖(いえど)も意(い)は虚(きょ)なる者(もの)(あ)り。承接(しょうせつ)の間(あいだ)に於(お)いて、略(ほぼ)転換(てんかん)を加(くわ)え、反(はん)と正(せい)と相(あい)(よ)り、順(じゅん)と逆(ぎゃく)と相(あい)(おう)じ、一呼(いっこ)一喚(いっかん)、宮商(きゅうしょう)(おの)ずから諧(かな)い、千鈞(せんきん)の力(ちから)を用(もち)うるが如(ごと)くにして、形迹(けいせき)を見(あら)わさず、繹(のべ)て之(これ)を尋(たず)ぬれば余味(よみ)(あ)り。

寄襄陽章孝標

原詩

「寄襄陽章孝標(雍陶)青油幕下白雲邊、日日空山夜夜泉。聞説小齋多野意、枳花陰裏麝香眠。」

【作者】

雍陶(ようとう)=(789〜873)。中晩唐の詩人。古代文学(詩経)の研究者と伝えられる。字は国鈞。

【詩形】

七言絶句 平起式 下平声先韻

【読み方】

襄陽(じょうよう)の章孝標(しょうこうひょう)に寄(よ)

青油幕下(せいゆばっか) 白雲(はくうん)の辺(へん)、日日(にちにち)の空山(くうざん) 夜夜(やや)の泉(いずみ)

(き)く説(な)らく 小斎(しょうさい) 野意(やい)(おお)しと、枳花陰裏(きかいんり) 麝香(じゃこう)(ねむ)る。

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【語 釈】

襄陽=現在の湖北省襄陽市襄州区あたりか。注に「襄水の陽(きた)なり」、また、「唐の山南道襄州の襄陽郡なり」とあり。章孝標=人名。中晩唐の人。字は道正。青油幕下=青油幕は青い油を塗った幕で、将軍の幕に用いた。将軍幕下の意。注に「青油幕は将幕を謂う」とあり。白雲邊=白い雲の漂うあたり。日日=毎日。空山=人気のないひっそりした山。夜夜泉=夜夜は、毎夜。毎晩聞こえて来るのは清らかな水の流れる音だけ。起句、承句ともに句中対である。聞說=聞くところによると。小齋=小さな書斎。野意=いなかびた趣き。。「野趣」に作るものあり。枳花=からたちの花。カラタチは、ミカン科の落葉低木。枝に鋭い刺がある。麝香=ジャコウジカを言う。

「三体詩評釈(野口寧齋著)」に「孝標、李紳に聘せられて襄陽府の従事たり。青油幕下は藩鎮の僚属たるが為に之を言うなり。而して身には官職有れども地は白雲の中に在り。空山流水、以て遊目す可く、以て聘懐す可し。是れ孝標の高致を品するなり。聞説以下は其の閑寂の中に就きて特に一事を叙す。枳花陰を成し、麝香来たり眠る、小斎の村意有りて、主人の機を忘るると云うを形容し出すなり。」とあり。

舊宮人

原詩

「舊宮人(劉得仁)白髮宮娃不解悲、滿頭猶自挿花枝。曾緣玉貌君王寵、準擬人看似舊時。」

【作者】

劉得仁(りゅうとくじん)=生没年未詳。晩唐の詩人。注に「貴王の子なり、開成より大中に至る」とあり。

【詩形】

七言絶句 仄起式 上平声支韻
滿

【読み方】

旧宮人(きゅうきゅうじん)

白髮(はくはつ)の宮娃(きゅうあ) 悲(かな)しみを解(かい)せず、満頭(まんとう) 猶(なお)(みずか)ら 花枝(かし)を挿(さしはさ)む。

(かつ)て 玉貌(ぎょくぼう) 君王(くんおう)の寵(ちょう)せしに縁(よ)りて、準擬(じゅんぎ)す 人(ひと)の看(み)て 旧時(きゅうじ)に似(に)るを。

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【語 釈】

舊宮人=宮人は宮女に同じ。旧はとしより。「悲老宮人」と題するものあり。宮娃=美しい宮女。娃は美人をいう。不解悲=年取ることの悲しみが理解できない。滿頭=頭いっぱい。挿花枝=簪を挿す。花枝はかんざし。玉貌=美しい顔立ち。玉容に同じ。君王寵=帝の寵愛。準擬=希望、期待すること。人看=他人が自分を看ての意。看字は平仄両用。似舊時=若かりし頃のままの意。旧時は過去、昔日に同じ。

「三体詩評釈(野口寧齋著)」に「天厨禁巒、此の詩を評して云く、水流れ花開き工力を仮らず、之を天趣というと。蓋し其の直ちに痴情を写して其の真に逼るをいうなり。此の詩『不解悲』の三字は全首の主眼なり。」、また、「猶自と曽縁と造語共に斟酌有り。準擬は独り自ら之を定むるものにして、下し得て亦妙なり。」、また、「此の詩の『不解悲』は、悲しまざるを以て之を悲しむ。語尤も婉曲にして浅露ならず。」とあり。

小樓

原詩

「小樓(儲嗣宗)松杉風外亂山青、曲几焚香對石屏。記得去年春雨後、燕泥時汚大玄經。」

【作者】

儲嗣宗(ちょしそう)=生没年未詳。晩唐の詩人。

【詩形】

七言絶句 平起式 下平声青韻

【読み方】

小楼(しょうろう)

松杉(しょうさん)風外(ふうがい) 乱山(らんざん)(あお)く、曲几(きょくき) 香(こう)を焚(た)いて 石屏(せきべい)に対(たい)す。

記得(きとく)す 去年(きょねん) 春雨(しゅんう)の後(のち)、燕泥(えんでい)(とき)に 大玄経(たいげんきょう)を汚(けが)すを。

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【語 釈】

小樓=作者の住居をいう。松杉風外=松や杉の林に吹く風の向こう側ほどの意。亂山=ふぞろいにそびえ立つ山々。曲几=曲木几。古人の几の多くは、元々曲がっている木を材料にして作られていることによる呼称。石屏=切り立った崖のこと。ただし、石でできた屏風とする解釈もある。いずれにせよ眼前の景色をいう。記得=思い出すこと、また、忘れることができないことをいう。得は、語助。機会にめぐまれてできることをいう。空憶とするものあり。燕泥=燕が巣を作るのに使う泥。大玄經=楊雄の著書。「易経」に「老子」の考え方を取り入れたもの。楊雄(紀元前53〜18)は、中国前漢時代末期の文人。字は子雲。

「三体詩評釈(野口寧齋著)」に「起の遠景、承の近景と相位置して好一幅の画図を為す。転結旧事を借りて其の地を伝えるなり。風は春雨に接し、曲几は大玄経に接す。煞(殺)として情緒有り。」とあり。

宮詞

原詩

「宮詞(王建)樹頭樹底覓殘紅、一片西飛一片東。自是桃花貪結子、錯教人恨五更風。」

【作者】

王建(おうけん)=(?〜830)。中唐の詩人。字は仲初。また、官職名から王司馬とも称される。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声東韻
西

【読み方】

宮詞(きゅうし)

樹頭(じゅとう)樹底(じゅてい) 残紅(ざんこう)を覓(もと)むれば、一片(いっぺん)は西(にし)に飛(と)び 一片(いっぺん)は東(ひがし)す。

(おの)ずから是(こ)れ 桃花(とうか) 子(し)を結(むす)ぶを貪(むさぼ)り、錯(あやま)って人(ひと)をして五更(ごこう)の風(かぜ)を恨(うら)ましむ。

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【語 釈】

宮詞=詩の一体。多くは宮廷での暮らしを詠じている。樹頭樹底=木のさきと木の下。樹頂、樹下。覓殘紅=殘紅は、凋残の花また落花をいう。残は、そこなわれる意。覓は、探し求める。自是=自然となることをいう。桃花=宮女の比喩。桃花は、女性の容貌を形容する語。貪結子=結子は実のこと。貪はほしがる。宮女が寵愛を受け、子に恵まれることの比喩。=あやまる、まちがえる。五更風=明け方の風。一夜を五つに区分し、午後八時頃を初更、午後十時頃を二更、真夜中を三更、午前二時頃を四更、午前五時頃を五更と呼ぶ。

注に「此の篇、蓋し比して興なり。残紅は色の衰えるなり。東西分飛は君と己と相背くなり。貪は算なり。子を結ぶとは寵有りて成すこと有るなり。五更の風とは、君心の飄忽なり。」とあり。

「三体詩評釈(野口寧齋著)」に「此の詩は全く此の体を用いて宮女を諷するなり。起承は落花をいう、一片花飛びて春已に滅却す、況や封姨一陣万片已に散ずるをや。故に人皆五更の風を恨む、安んぞ知らんや花の落つるは子を結ぶが為なり、花落ちて子成る、何の恨むべき事有らんや。然れども更に深く詩意を捜れば、蓋し当時専房の寵有を受けたるもの、籠種を得んことを期して、却って其の生を傷ぶりしもの有りたるならん。建、故に其の自ら孽を招くを嘲る。貪字錯字、尤も味わうべきなり。而して事実直露すべからざるを以て、特に此の体を以て之を行わる。是他の諸作の実事実写せる者と体裁を異にする所以なるべきか。」とあり。

祗役遇風謝湘中春色

原詩

「祗役遇風謝湘中春色(熊孺登)水生風熟布帆新、只見公程不見春。應被百花撩亂笑、比來天地一閑人。」

【作者】

熊孺登(ゆうじゅとう)=生没年未詳。中唐の詩人。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声真韻

【読み方】

(えき)を祗(つつ)しんで風(かぜ)に遇(あ)い、湘中(しょうちゅう)の春色(しゅんしょく)を謝(しゃ)

(みず)(しょう)じ 風(かぜ)(じゅく)して 布帆(ふはん)(あら)たなり、只(ただ) 公程(こうてい)を見(み)て 春(はる)を見(み)ず。

(まさ)に百花(ひゃっか)の繚乱(りょうらん)たるに笑(わら)わるべし、比来(ひらい) 天地(てんち)の一閑人(いちかんじん)

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【語 釈】

祗役=君主の命によりつつしんで任務に出ること。湘中=湘江(湘水とも言う)沿岸を意味する。水生=水は川のこと。川が増水することを言う。春、桃の花が咲く頃の春雨や雪解け水のことを桃花水と言う。風熟=順風が吹くことを言う。布帆新=布帆は布製の帆。ここでは、新たに船出することを言う。注に「顧愷之嘗借殷仲堪布帆、遭風大敗、愷之與仲堪書曰、行人安穩、布帆無恙(顧愷之嘗て殷仲堪が布帆を借り、風に遭い大いに敗る、愷之仲堪に書を与えて曰く、行人安穏にして,布帆恙無しと)」とあり。只見=只を唯に作るものあり。公程=公務での旅程。百花撩亂=多くの花が咲き乱れるさま。撩字を蕭韻(平韻)篠韻(仄韻)両韻としている字典があるが、詩韻含英異同弁では、蕭韻となっている。僚字の平仄と誤ったものであろう。比來=ちかごろ、このごろ。閑人=ひまな人、のんびりしている人。間人に同じ。

「三体詩評釈(野口寧齋著)」に「題目已に奇にして三事を具す。祗役なり、風に遇うなり、湘中の春色を謝するなり。詩中巧みに三事を参互して強いて之を作すが如くならず。起句は遇風にして祗役を兼ぬ、春水新たに生じ、春風已に熟し、布帆恙無くして湘江を下るなり。承句は祗役にして春を兼ぬ、春に逢うて留連することを得ざるは公程の厳なるが為なり。百花の繚乱するは転句謝春にして遇風を帯ぶるなり。而して結句は全く此の三事を撇却し、更に天の一方より落想し来るものなり。従来自ら閑人を以て居る。而して今日公程相促す、春に笑わるるも亦以て言の答うべきなきをいい、承句に対照して、一閑一忙、分明に法度を為す」とあり。

「国訳漢文大成(第六巻 三体詩)」の句釈に「天地一閑人、此の一の字、『読書楽趣』に少に作る、少は欠なり、天地少閑人(天地 閑人を少くなり)にて意味始めて通ず、一閑人なれば、春を賞ずる道理なり、少にして始めて不見春の意を現すものとす」とあり。

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以下、掲載予定の詩

過勤政樓 杜牧
千秋佳節名空在、承露絲囊世已無。唯有紫苔偏稱意、年年因雨上金鋪。

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