漢詩作法入門講座

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後聯對句格 - 聯珠詩格 - 漢詩の鑑賞

後聯對句格

後聯對句格とは、後聯(第三句:転句と第四句:結句)を対句とする格をいう。

漫興

原詩

「漫興(杜甫)腸斷春江欲盡頭、杖藜徐步立芳洲。顚狂柳絮隨風舞、輕薄桃花逐水流。」

【作者】

杜甫(とほ)=(712〜770)。詩聖とも呼ばれる盛唐の詩人。字は子美。号は少陵野老、杜陵野老、または杜陵布衣。杜少陵、杜工部とも呼ばれる。

【詩形】

七言絶句 仄起式 下平声尤韻

【読み方】

漫興(まんきょう)

(ちょう)は断(た)ゆ 春江(しゅんこう) 尽(つ)きんと欲(ほっ)する頭(ほとり)、杖藜(じょうれい) 徐步(じょほ)して 芳洲(ほうしゅう)に立(た)つ。

顚狂(てんきょう)の柳絮(りゅうじょ) 風(かぜ)に随(したが)って舞(ま)い、軽薄(けいはく)の桃花(とうか) 水(みず)を逐(お)って流(なが)る。

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【語 釈】

漫興=この詩は、漫興九首の其五。漫興とは、見るまま、思うままに詩を作ること。漫与に同じ。与の旧字体「與」が「興」に似ていることから「漫興」に誤られたと言う。腸斷=非常に悲しむさま。断腸に同じ。春江=春の川。欲盡頭=晩春の川のほとり。杖藜=アカザの茎で作った杖。藜杖に同じ。アカザは、アカザ科の一年草。葉はゆでて食用となり、成長すると茎は太く硬くなるため、杖の材料にされた。徐步=ゆっくり、静かに歩く。徐は、おもむろ、ゆっくり、しずか。芳洲=芳草の生い茂る中州。 顚狂=挙動が軽いさま。柳絮=柳の種子で綿毛状のもの。五月頃、風に乗って乱れ飛ぶ。輕薄=うすくて軽いこと。桃花=桃の花。三月頃に花をつける。

精刊本、起聯注に「立意有樂(立の意、楽しみ有り)」、後聯注に「語雖淺近多少自在實爲古今之絶唱(語は浅近なりと雖も多少の自在、実に古今の絶唱と為す)」、後聯増注に「此詩甫漫興九絶之一也。春遊江洲因賦所見。柳絮桃花即其景也。其曰腸断則傷春之意也。(此の詩は甫の漫興九絶の一なり。春、江洲に遊び因って見る所を賦す。柳絮、桃花は即ち其の景なり。其の腸断と曰うは、則ち春を傷むの意なり。)」とあり。

書湖陰壁

原詩

「書湖陰壁(王荊公)茅簷長掃淨無苔、花木成蹊手自栽。一水護田將綠繞、兩山排闥送青來。」

【作者】

王荊公(おうけいこう)=王安石(おうあんせき)。(1,021〜1,086)。北宋の政治家・詩人・文章家。字は介甫、号は半山。荊国公に封ぜられ、「文」と謚されたので、王荊公、王荊文公と呼ばれる。唐宋八大家の一人。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声灰韻

【読み方】

湖陰(こいん)の壁(かべ)に書(しょ)

茅簷(ぼうえん) 長(つね)に掃(は)いて 淨(きよ)くして苔(こけ)(な)く、花木(かぼく) 蹊(けい)を成(な)して 手(て)(みずか)ら栽(う)う。

一水(いっすい) 田(た)を護(ご)して 緑(みどり)を将(もっ)て繞(めぐ)り、両山(りょうざん) 闥(たつ)を排(はい)して 青(あお)を送(おく)り来(き)たる。

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【語 釈】

書湖陰壁=「書湖陰先生壁」と題するものあり。注に「湖陰は楊徳逢の居する所」とあり。楊徳逢については未詳。茅簷=茅屋の軒下。茅檐に同じ。淨無苔=「静無苔」とするものあり。花木=花と木。成蹊=蹊はこみち。手自=手ずから。一水=ひとすじの川。護田=川が田の間を流れることをいう。將綠繞=川が緑をたずさえてめぐる。緑は、田の緑が水に映えるをいう。将字は両韻字、「以て」のときは平字、将軍のときは仄字。排闥=門を開くこと。闥は、小門、門の内側をいう。送青來=山々の緑をいう。

精刊本、起聯注に「下字皆不凡(字を下して皆凡ならず)」、後聯注に「将送二字本宋玉九弁亦本燕燕詩字(将送の二字、宋玉が九弁に本づく、亦燕燕詩の字に本づく)」とあり。

宋玉九弁(楚辞)に「登山臨水兮送將歸」の句あり。

燕燕詩(詩経)に「燕燕于飛、差池且羽。之子于帰、遠送于野。贍望弗及、泣涕如雨。燕燕于飛、頡之頏之。之子于帰、遠于将之。贍望弗及、佇立以泣。」の句あり。

絶句

原詩

「絶句(僧志南)古木陰陰繫短篷、杖藜扶我過溪東。沾衣欲濕杏花雨、吹面不寒楊柳風。」

【作者】

僧志南(そうしなん)=生没年未詳。南宋の僧。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声東韻

【読み方】

絶句(ぜっく)

古木(こぼく) 陰陰(いんいん)として 短篷(たんぽう)を繫(つな)ぎ、杖藜(じょうれい) 我(われ)を扶(たす)けて 渓東(けいとう)を過(す)ぐ。

(ころも)を沾(うるお)して 湿(うるお)わんと欲(ほっ)す 杏花(きょうか)の雨(あめ)、面(めん)を吹(ふ)いて 寒(さむ)からず 楊柳(ようりゅう)の風(かぜ)

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【語 釈】

古木=年を経た木々、老木、転じて森をいう。陰陰=薄暗くもの寂しいさま。陰中とするものあり。短篷=小船をいう。篷は、とまぶきの舟。竹や茅で編んだ舟のこと。杖藜=アカザの茎で作った杖。藜杖に同じ。アカザは、アカザ科の一年草。葉はゆでて食用となり、成長すると茎は太く硬くなるため、杖の材料にされた。過溪東=谷の東側を通り過ぎる。過橋東とするものあり。過は、すぎるの意のときは平仄両用、誤ちの意、過失のときは仄字。詩韻含英の歌韻の異同弁には「箇韻異」となっているが、この詩の如く両用と考えなければ平仄の合わぬもの多し。佩文韻府では「又箇韻」と両用の表記あり。また、「歌韻同。又過失,獨用」としているものもある。先人云く、「領悟して知るべし」と。杏花雨=清明の頃に降る雨をいう。アンズは、春(二十四節気の清明の頃)に花を咲かせ、初夏に実を付ける。吹面=面は顔。楊柳風=春風をいう。楊柳は、ねこやなぎ。春の訪れを告げる植物のひとつでもある。

精刊本、承句注に「扶我二字好(扶我の二字好し)」、後聯注に「朱文公跋云南詩清麗有餘格力閑暇無蔬笋氣余深愛之(朱文公の跋に云く、南が詩清麗余り有り、格力閑暇、蔬笋の気無く、余深く之を愛す。)」とあり。

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