漢詩作法入門講座

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起聯物喩物對格 - 聯珠詩格 - 漢詩の鑑賞

起聯物喩物對格

起聯物喩物對格とは、起聯(第一句と第二句)においてある物を他の物によって喩え、対句とする格をいう。

薔薇

原詩

「薔薇(張祜)曉風抹破燕支顆。夜雨催成蜀錦機。當晝開時正明媚。故郷疑是買臣歸。」

【作者】

張祜(ちょうこ)=(782?〜852)は、晩唐の詩人。字は承吉。作者を張祐としているが、張祜の誤りであろう。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声微韻

【読み方】

薔薇(しょうび)

暁風(ぎょうふう) 抹破(まっぱ)す 燕支(えんじ)の顆(か)、夜雨(やう) 催(もよお)し成(な)す 蜀錦(しょくきん)の機(はた)

(ひる)に当(あた)って 開(ひら)く時(とき) 正(まさ)に明媚(めいび)、故郷(こきょう) 疑(うたが)うらくは是(こ)れ 買臣(ばいしん)(かえ)るかと。

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【語 釈】

薔薇=バラ。牛勒、牛棘、刺紅、薔蘼花ともいう。曉風=明け方に吹く風。抹破=抹はさっとなする、こすりつける。破は助字。燕支顆=燕支はベニバナ(紅藍花)。燕脂、臙脂、焉支ともいう。ベニバナは染料の原料で、その色を「えんじ」と読んだ。「燕支山」がベニバナの産地であることに基づくとか、燕の国がベニバナの染料の産地であったので「燕脂」と呼ぶなど諸説がある。燕字は、つばめの意のときは仄字、国名の意のときは平字。顆はつぼみのこと。蜀錦機=蜀江の錦。蜀(現在の四川省)の錦江の水で濯った錦は色が鮮明で高級とされ、「蜀錦」と呼ばれた。赤地に連珠の文様をめぐらし、その中に花や鳥獣などの文様を織り出している。機は機織りの器械。當晝=白天に同じ。昼間のこと。明媚=はっきりして美しく人の心を動かすこと。買臣歸=朱買臣、前漢の政治家、字は翁子、会稽郡呉県(現在の江蘇省蘇州市)の人。「故郷に錦を飾る」の故事に登場する人物。漢書の朱買臣伝に「上、買臣に謂って曰く、富貴にして故郷に帰らざるは、繍を衣て夜行くが如し、今、子如何」とあり。衣繍夜行、衣錦夜行、衣錦夜游の語あり。

精刊本、起聯注に「以臙脂蜀錦喩薔薇(臙脂、蜀錦を以て薔薇に喩う)」、後聯注に「朱買臣云富貴不帰故郷如衣錦夜行(朱買臣が云く、富貴にして故郷に帰らざるは、錦を衣て夜行くが如し)」とあり。

畫唾鴨

原詩

「畫唾鴨(山谷)山雞照影空自愛。孤鸞舞鏡不作雙。天下眞成長會合。兩鳧相倚睡秋江。」

【作者】

黄山谷(こうさんこく)=黄庭堅(こうていけん)、(1045〜1105)。北宋の人。字は、魯直、山谷道人、また、涪翁などと号す。師の蘇軾と並び蘇黄と称される。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声江韻

【読み方】

畫睡鴨(がすいおう)

山鶏(さんけい)(かげ)を照(て)らして空(むな)しく自愛(じさい)し、孤鸞(こらん)(かがみ)に舞(ま)って双(そう)を作(な)さず。

天下(てんか) 真成(しんせい)に 長(ながく)く会合(かいごう)するは、両鳧(りょうふ)(あい)(よ)りて秋江(しゅうこう)に睡(ねむ)る。

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【語 釈】

畫睡鴨=寄り添って眠る鴨が描かれた画。 山雞照影=山鳥は美しい羽を持っており、自らもその羽根をあいしていた。一日中川面に映る自分の羽根に見とれて、ついには溺れ死んだという故事あり。『博物誌』に「山雞有美毛。自愛其色。終日映水。目眩則溺死。(山雞は美毛有り,自ら其の色を愛す,終日水に映じて,目眩みて則ち溺死す)」とあり。 孤鸞舞鏡=罽賓王が一羽の鸞を得たが三年経っても一向に鳴かない。そこで王の夫人がもう一羽入れれば鳴くと聞いたことがあるというので、鏡に鸞を写してみることにした。すると、鸞は悲しい声で鳴き、一夜で絶命したという故事あり。『類苑』に「罽賓王得一鸞三年不鳴。夫人曰"聞見影則鳴"。懸鏡照之、鸞覩影悲鳴、中宵一奮而絶。(罽賓王、一鸞を得るも三年鳴かず。夫人曰く、"聞けば影を見て則ち鳴く"と。鏡を懸け之に照らす。鸞影を覩て悲鳴し、中宵に一奮して絶ず)」とあり。 不作雙=つがいになれないこと。 眞成=まことにと訓ず。真誠に同じ。 會合=集う。 兩鳧=つがいの鴨。かも、あひるなどの類の鳥を鴨、鳧という。 相倚=寄り添う。相対、相見など「ともに」の意のときは平、人相、宰相のときは仄字。 秋江=秋の川。

精刊本、注に「四句皆本徐陵鴛鴦賦語。點竄僅數字耳。末語用意尤深(四句皆徐陵が鴛鴦の賦の語に本づく。点竄僅かに数字のみ。末語に意を用いること尤も深し)」とあり。

徐陵鴛鴦賦の中に、次の句あり。

・・・
山雞映水那相得。孤鸞照鏡不成雙。
天下眞成長會合。無勝此翼兩鴛鴦。
・・・

注にもある通り、三句は文字をいくつか直したのみで、元の句のままであり、四句目(結句)のみを変えている。詩を鑑賞する点からは面白いが、作詩の参考としては容易ではない。我々が同じようなことをすれば、それは単なる剽窃となるであろう。

牡丹

原詩

「牡丹(黄晦材)棗花至小能成實。桑葉雖柔解吐絲。堪笑牡丹如許大。不成一事又空枝。」

【作者】

王晦材(おうかいざい)=未詳。作者を王曙とするもの多し。王曙(おうしょ:963〜1034)は、宋代の詩人。字は晦叔。文康と諡される。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声支韻

【読み方】

牡丹(ぼたん)

棗花(そうか)は 至(いた)って小(しょう)なれども 能(よ)く実(み)を成(な)し、桑葉(そうよう)は 柔(じゅう)なりと雖(いえど)も 解(よ)く糸(いと)を吐(は)く。

(わら)うに堪(た)えたり 牡丹(ぼたん)(かく)の如(ごと)く大(だい)なるに、一事(いちじ)を成(な)さず 又(また)空枝(くうし)なり。

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【語 釈】

棗花至小能成實=棗は、くろうのもどき科の落葉低木、その実は食用、薬用に供される。 桑葉雖柔解吐絲=桑は、くわ科の落葉高木、葉はかいこの飼料となる。樹皮は製紙原料、材は家具材にと、その用途はひろい。 如許大=如許は、若此に同じ。牡丹の花の華やかで大きいこという。 不成一事=使い道がないこと。事は、つかえる、使える。 又空枝=葉の落ちた枝。

精刊本、起聯注に「揚此抑彼(此れを揚げて彼を抑す)」、後聯注に「此詩意在実用、非事浮華也(此の詩の意は実用に在り、浮華の事に非ざるなり)」とあり。また、増注に「諷人之有虚名而無実用也(人の虚名有りて実用無きを諷するなり)」とあり。

巻之一 終

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