漢詩作法入門講座

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起聯平側對格 - 聯珠詩格 - 漢詩の鑑賞

起聯平側對格とは

起聯、すなわち第一句と第二句が対句になっていて、更に、第一句の末字が押韻していない(踏み落とし)ものをいう。

上高侍郎

原詩

「上高侍郎(高蟾)天上碧桃和露種。日邊紅杏倚雲裁。芙蓉生在秋江上。不向東風怨未開。」

【作者】

高蟾(こうせん)=生没年未詳。晩唐の文人。

【詩形】

七言絶句 仄起式 上平声灰韻

【読み方】

高侍郎(こうじろう)に上(たてまつ)

天上(てんじょう)の碧桃(へきとう) 露に和して種え。日辺(じつへん)の紅杏(こうきょう) 雲(くも)に倚(よっ)て裁(う)う。

芙蓉(ふよう)は 生(しょうじ)じて秋江(しゅうこう)の上(ほとり)に在(あ)り。東風(とうふう)に向(む)かって 未(いま)だ開(ひら)かざるを怨(うら)まず。

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【語 釈】

上高侍郎=上は、呈上。高侍郎は、高駢。侍郎は官名。天上碧桃=仙界にある桃。青黒色の花をつける。日邊=朝廷の喩え。同じく天上も朝廷の喩え。紅杏=杏は、木名。薄紅色の花を咲かせる。芙蓉=作者を比喩したもの。木芙蓉。なお、荷花としている訳書もあり。増注に、芙蓉は草芙蓉と木芙蓉の二種有り。草芙蓉は荷花、木芙蓉は拒霜花、木蓮とあり。秋江=ひっそりとした川の意。東風=春風。怨未開=試験に不合格となったことを花に喩えた表現。芙蓉が下第(不合格)した作者を指し、碧桃、紅杏は、合格した者たちを指す。

精刊本、起聯の注に「此蟾下第詩起句喩当時中選者得其所也(此れ蟾、下第の詩、起句当時選に中る者の其の所を得るに喩ゆなり)」、また、後聯の注に「芙蓉指以自喩言其生不逢時又不敢怨東風不吹噓真知時守分者(芙蓉、指して以て自ら喩え、其の生を言う、時に逢わず、又、敢て東風の吹噓せざるを怨まず、真に時を知り、分を守る者)」とあり。

宿杜家亭

原詩

「宿杜家亭(賈島)牀頭枕是溪邊石。井底泉通竹下池。宿客不眠過半夜。獨聞山雨到來時。」

【作者】

賈島(かとう)=(779〜843)。中唐の詩人。字は浪仙、または閬仙。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声支韻
宿

【読み方】

杜家亭(とかてい)に宿(しゅく)

床頭(しょうとう)の枕(ちん)は是(こ)れ 渓辺(けいへん)の石(いし)。井底(せいてい)の泉(いずみ)は通(つう)ず 竹下(ちくか)の池(いけ)

宿客(しゅくかく) 眠(ねむ)らず 半夜(はんや)を過(す)ぎ。独(ひと)り聞(き)く 山雨(さんう) 到(いた)り来(きた)るの時(とき)

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【語 釈】

宿杜家亭=宿村家亭子、宿杜司空東亭,題杜司戸亭子などの題になっているものあり。亭、亭子は、あずまや。杜家亭は未詳。牀頭=ねどこのそば。溪邊石=谷川の石。石を枕にする。井底=井戸の底。竹下池=竹林の中にある池。宿客=旅人。過半夜=半夜は、夜中。過字、経過の意味は平字、あやまちの意味は仄字。

精刊本、起聯の注に「善写野興朱文公曽大書刻石行于世(善く野興を写す、朱文公曽て大書し石に刻み世に行う)」、また、後聯の注に「此言不寝而聴雨到来時也(此の言、寝ねずして雨をの到り来る時を聴くなり)」とあり。

及第

原詩

「及第(夏竦)殿上衮衣明日月。硯中旗影動龍蛇。縱横禮樂三千字。獨對丹墀日未斜。」

【作者】

夏竦(かしょう)=(985〜1,051)。北宋の人、字は子喬。

【詩形】

七言絶句 仄起式 下平声麻韻
殿

【読み方】

及第(きゅうだい)

殿上(でんじょう)の袞衣(こんい) 日月(じつげつ)(あき)らかに。硯中(けんちゅう)の旗影(きえい) 竜蛇(りゅうだ)を動(うご)かす。

縦横(じゅうおう) 礼楽(れいらく) 三千字(さんぜんじ)。独(ひと)り丹墀(たんち)に対(たい)して 日(ひ)(いま)だ斜(なな)めならず。

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【語 釈】

及第=科挙の試験に合格すること。登第に同じ。延試と題するものあり。衮衣=竜のぬいとりのある服。天子のこと。日月=聖人、賢人を意味する。動龍蛇=硯に映った旌旗の影が龍や蛇のように動いて見える。前二句、科挙の雰囲気を描写している。北宋時代には、科挙の最終試験は皇帝自らが行い殿試と呼ばれる。縱横=自由自在。禮樂=礼は礼記、楽は楽経。科挙に出題される礼記、楽経、詩経、書経、易経、左伝などを意味する。三千字=自在に答案できたことをいう。獨對=科挙の試験は個室でで行われていた。丹墀=丹砂を使って赤く塗った壁。受験している部屋の壁のこと。日未斜=夕方までに試験ができた。誇張した表現、科挙の試験は三日間行われる。

精刊本、起聯の注に「二句前輩称其偉麗公応制科対策廷下宦者乞詩公題此(二句前輩其の偉麗を称う、公、制科に応じて廷下に対策す、宦者、詩を乞い、公、此に題す)」、また、後聯の注に「前輩又謂此詩逞才負気有矜驕之失(前輩又謂う、此の詩、才を逞しく、気を負い、矜驕の失有り)」とあり。

土牀

原詩

「土牀(張横渠)土牀烟足紬衾煖。瓦釜泉甘豆粥新。萬事不求溫飽外。漫然清世一閑人。」

【作者】

張横渠(ちょうおうきょ)=張載(ちょうさい)、(1,020〜1,077)。北宋の儒学者。字は子厚、横渠先生と称された。

【詩形】

七言絶句 平起式 上平声真韻

【読み方】

土牀(どしょう)

土牀(どしょう) 煙(えん)(た)りて 紬衾(ちゅうきん)暖かに。瓦釜(がふ) 泉(いずみ)(あま)くして 豆粥(とうしゅく)(あら)たなり。

万事(ばんじ) 求(もと)めず 溫飽(おんぽう)の外(ほか)。漫然(まんぜん)たる 清世(せいせい)の一閑人(いちかんじん)

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【語 釈】

土牀=コタツのようなもの。増注に「性理群書の註に土を累て牀を地爐中に為る、煙火常に足又紬有り、被を為し以て体を暖ずべし」とあり。紬衾=つむぎの布団。衾はふとん。瓦釜=素焼きの釜。瓦は、素焼きの土器の総称。豆粥=豆を入れた粥。溫飽=衣食に不自由がないこと。漫然=渾然。清世=よく治まった世。一閑人=閑人は、暇な人。増注に「横渠自ら言う、我、清明の世に於いて一幽閑無事の人に過ぎざるのみ」とあり。

精刊本、起聯の注に「二句言人生衣衾温飽而已富貴何足多道(二句の言は、人生衣衾温飽にして已に富貴、何ぞ多く道に足る)」、また、後聯の注に「此非安貧楽道者不能道(此れ貧に安んじ、道を楽しむ者に非ざれば、道うこと能わず)」とあり。

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