「漢文とは何か」(其の四)〜漢字の「音訓」の正体(1)

漢文を読む場合、私たちは中国語で発音することなく、日本語として読む「訓読」を行い、その対象となる文を漢文と呼ぶことを勉強しました。

日本語で読む以上、当然ながら中国語の発音で読む訳ではありません。では、中国語の発音は全く無関係でしょうか?

ここまでの「漢文とは何か」と題する記述の流れから、中国語の発音が無関係でないことは予測できると思います。それが漢字の「音訓」、すなわち「音読み」と「訓読み」です。今回は、このうち「音読み」について勉強することにします。

「音読み」について

まず、訓読においては、漢字を読むわけですが、その読みに「音読み」と「訓読み」があることは知っています。この「音読み」が中国語の発音に関係することも容易に予測がつきました。例えば、

「山」・・・「さん」(音読み)
「山」・・・「やま」(訓読み)

「川」・・・「せん」(音読み)
「川」・・・「かわ」(訓読み)

などいくらでも例を挙げることができると思います。ただし、「音読み」が中国語の発音と完全に一致するわけではありません。

「山」・・・「shān」ピンイン(カタカナ表記すれば「シャン」ぐらいだろうか
「山」・・・「さん」音読み

このように「音読み」は中国語の発音が訛ったものと言われています。では、「訓読み」とは何でしょうか。

前野先生の『漢文入門』によれば「訓読み」は「やまとことば」である、と書いてあります。つまり、中国語を日本語として翻訳した言葉と解することができます。「山」とか「川」のように適当な訳語が考えられた漢字に「音読み」と「訓読み」があるようです(ただし、後述しますが例外もあります)。

もう少し「音読み」について調べる(漢和辞典」で調べます)と、「音読み」しかない漢字があることがわかります。

「式」・・・「しき」

この「式」という漢字を私たちは日常で意味を持って普通に使っています。これらの漢字については、「訓読み」としての適当な「訳語」がなかったので、「音読み」がそのまま意味を持って定着したと考えています。

次の例を見てください。

「客」・・・「きゃく」(音読み)

この「客」という漢字も「漢和辞典」で調べると、「きゃく」が「音読み」で、「訓読み」が掲載されていませんでした。

実は、「客」については「まろうど」という読み方があるのですが、常用漢字表にない読み方(「表外読み」あるいは「表外音訓」とも言います)なので、高校生などが通常使用する多くの漢和辞典では、「訓読み」がない漢字として扱われています(すべての漢和辞典を調べた訳ではないので、「まろうど」が「訓読み」として掲載されている辞典もあるかもしれません)。

もうひとつ「音読み」の例を挙げてみます。

「馬」・・・「ば」(音読み)
「馬」・・・「うま」(訓読み)

この「馬」の文字の「訓読み」は、実は元々「音読み」であったとテキストなどには出てきます。この「馬」の文字と一緒によく例示されているのが「梅」という文字です。この「梅」の訓読みである「うめ」も元は音読みであるとのことです。

このように現代では「訓読み」と考えられている文字の中には中国語の発音自体の変化により「訓読み」として扱われる文字があるとは、何とも驚きです。

さて、もう少し勉強しなければいけないことがあるようですが、今回はここまでとして、次回は、さらに勉強を進めて「訓読み」にたどり着きたいと思います。

なお、今回は趣味としての私見があり、私の理解不足、勘違いなどによる誤りもあることでしょう。そうした私の誤りに追随することのないよう、是非、最後に掲載しているテキストをお読みいただき、私の誤りを見つけていただきたいと思います。


今回のキーワード

音訓、音読み、訓読み、漢和辞典、表外読み、表外音訓


今回の勉強で使用したテキスト

前野直彬(2015年)『漢文入門』筑摩書房
加藤徹(2013年)『白文攻略 漢文法ひとり学び』白水社
古田島洋介・湯城吉信(2011年)『漢文訓読入門』明治書院
小川 環樹・西田 太一郎(1957年)『漢文入門』岩波書店


投稿者: 滄洲

趣味で漢詩を作ったり、三体詩や聯珠詩格などの詩集、論語や老子などの漢文を読んだりしている「滄洲」と言います。 よろしくお願いします。